東南アジア競技大会男子サッカー:マレーシアはベトナムに完敗も準決勝進出
12月11日にグループステージ(GS)最終戦となるベトナム戦に臨んだマレーシアは、ベトナムに完敗しましたが、GS各組2位の3チーム中、得失点差などで他の2チームを上回り、2大会ぶりの準決勝進出を果たしています。
12月11日のベトナム戦のマレーシアの先発XIは以下の通り。12月6日のラオス戦からは、1ゴール1アシストのMFハイカル・ダニシュとDFアイマン・ハキミ (いずれもスランゴールU21) 、1ゴールのFWハキミ・アジム(クアラルンプール・シティ)、DFアイサル・ハディ(ジョホールU21)、MFハジク・クティ(ペナン)の5名が外れ、代わりにDFウバイドラー・シャムスル(トレンガヌ)、DFアイマン・ユスフ(スランゴールU21)、MFムハマド・アブ・カリリ、FWアリフ・イズワン、FWラーマン・ダウド(いずれもスランゴール)が代わって先発しています。

タイのバンコクにあるラジャマンガラスタジアムで行われた試合は、開始からベトナム攻撃陣がサイドからの攻撃で躍動。グエン・ディン・バックとグエン・タイ・クオックがマレーシアゴールに迫ります。
そして開始から11分でグエン・ヒエウ・ミンのヘディングシュートでベトナムがリードを奪います。さらにグエン・ディン・バックの機敏な動きからファム・ミン・フックのゴールが決まり、22分にベトナムがリードを2点に広げると、その後もベトナムは多くのシュートでマレーシアを圧倒し続けます。
マレーシアもクラブからのリリースが遅れて今大会はこの試合から出場となったアリフ・イズワンらがシュートを放ちますが、得点には至らず、前半はベトナムが2-0とリードして終了します。
マレーシアのナフジ・ザイン監督は、ムハンマド・アブ・カリルとアイマン・ユスフを下げ、初戦のラオス戦では1ゴール1アシストを記録したハイカル・ダニッシュ(スランゴールU21)とアイサル・ハディ(ジョホールU21)を投入して、状況の打開を図ります。。
65分にはベトナムのペナルティエリア内で途中出場のロヒシャム・ハイカル(スランゴールU21)がシュートを放ちますが、相手DF陣にブロックされるなど数少ないチャンスを活かせません。その後もベトナムは先制ゴールを決めたグエン・ヒエウ・ミンとファム・リー・ドゥックを中心としたベトナムの守備を崩すことができません。
さらに試合終了間際にコーナーキックを獲得したが、そのシュートはベトナムGKトラン・チュン・クエンに見事にセーブされ、試合はそのまま終了。ベトナムのシュート8本(枠内3本)に対してマレーシアは3本(枠内0本)では流石に勝負にはなりませんでした。
この敗戦で今年1月のナフジ監督就任以来マレーシアU22/23代表の戦績は3勝1分7敗となりました。勝利したのがブルネイ、モンゴル、ラオスに対して、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムと域内のライバルには全く勝てていません。ミャンマーがインドネシアを3点に抑えてくれたおかげで、大会前の目標であった準決勝進出は果たしましたが、その準決勝で対戦するタイには、U23アジア杯予選で敗れており、厳しい試合になりそうです。
ナフジ監督への批判も聞こえてきますが、あらゆる面で支援されているA代表に比べると大会前の合宿期間の短さや、せっかくのFIFAデイズに強化試合を行わないなど、運営側の問題もあり、ナフジ監督1人に責任を取らせるのは無責任にも思えます。
なおこの試合の翌日に行われたグループステージ(GS)C組の最終第3節でインドネシアがミャンマーに3-1で勝利しましたが、B組2位のマレーシアはC組2位のインドネシアの成績を上回ったことで、GS各組2位の3チーム中、他の2チームを上回り準決勝進出を果たしています。
マレーシアとインドネシアはいずれも勝点3、得失差+1の成績で並びましたが、マレーシアの4得点に対して、インドネシアは同3点でした。ベトナムには0封されたマレーシアでしたが、ラオス戦で4得点を挙げており、フィリピン戦ではゴールを奪えずに敗れたインドネシアがC組最下位のミャンマーから3ゴールしか奪えなかった差が出た形になりました。なおA組は初戦でシンガポールを破る波乱を起こした東ティモールが2位でしたが、こちらはタイに1-6で破れて得失差-3となっています。
2大会ぶりの準決勝進出を果たしたマレーシアは、明日12月15日に開催国タイとの準決勝に臨みます。
東南アジア競技大会男子サッカー グループステージB組第3節
2025年12月11日@ラジャマンガラ・スタジアム(バンコク、タイ)
ベトナム 2-0 マレーシア
⚽️ベトナム:グエン・ヒエウ・ミン(11分)、ファム・ミン・フック(22分)
東南アジア競技大会男子サッカー グループステージB組最終順位
| 順 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 勝点 |
| 1 | ベトナム | 3 | 2 | 0 | 0 | 4 | 1 | 3 | 6 |
| 2 | マレーシア | 3 | 1 | 0 | 1 | 4 | 3 | 1 | 3 |
| 3 | ラオス | 3 | 0 | 0 | 2 | 2 | 6 | -4 | 0 |
ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑:代表チーム強化の中心人物イスマイル殿下がマレーシア政府の公式書類の信憑性を疑う声を牽制
ジョホール州摂政でジョホール・ダルル・タジムのオーナーでもあり、さらにヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)によるマレーシア代表強化を支援するトゥンク・イスマイル・スルタン・イブラヒム殿下は、一部の人々がマレーシア政府国民登録局(NRD)の書類よりも外国の書類を信頼するのか疑問を呈しています。
現在、アジア杯2027年大会予選を戦ているマレーシア代表のヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑について語る中で、イスマイル殿下は「マレーシアの公式文書を疑うことは、マレーシアの法律の主権を損ない、間接的に他のマレーシア国民の市民権にも疑念を投げかけることになる」と発言していることをマレーシア語紙シナルハリアンが報じています。
「外国の書類には彼らの祖父が『向こう(マレーシア国外)で生まれた』と書かれている一方で、こちら(NRD)の書類には『ここ(マレーシア国内)で生まれた』と記載されている。しかし一部の人々はなぜか、『こちらの書類が間違っていて、外国の書類の方が正しい』と主張している。
「NRD の公式文書や証明書を疑うというのであれば、疑っているあなた自身もマレーシア人ではないのかも知れない」と、イスマイル殿下は Sinar Harian の取材に対して述べています。
さらにイスマイル殿下は、この国籍偽装疑惑問題が浮上したとたん、多くの人が突然「専門家」や「FIFA 会長」のように振る舞い始めたが、その多くの人々は選手の未払い給料や若い年代の選手の育成など、マレーシアサッカーの本当の問題については沈黙したままだと指摘しています。
「皆が自分の意見を主張し、皆が監督やコーチのように発言する一方で、なぜマレーシアサッカーが前に進んでいないのかについて話す人はいない。しかし、7名のヘリテイジ帰化選手に関する書類偽造の疑惑が出たとたん、皆がその話ばかりする。そして、FIFA 自身が(当初)承認したにも関わらず、後になってそれが国籍偽装疑惑問題として扱われるようになった」と語っています。
ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑:FIFAがマレーシア協会に圧力?「スポーツ仲裁裁判所への控訴を阻止しようとしている」
ジョホール州摂政でジョホール・ダルル・タジムのオーナーでもあり、さらにヘリテイジ帰化選手(マレーシアにルーツを持つ帰化選手)によるマレーシア代表強化を支援するトゥンク・イスマイル・スルタン・イブラヒム殿下は、FIFA 内の特定の関係者がマレーシアサッカー協会(FAM)に対して、ヘリテイジ帰化選手の国籍偽装疑惑に対するFIFAの処分取り消しを求める控訴をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に持ち込まないよう圧力を受けていた、と述べています。
イスマイル殿下は、この匿名の人物による行動は奇妙であり、正義を求める努力を妨げるだけでなく、マレーシアのサッカーの利益にも影響すると述べた。
「この人物は直接、マレーシアサッカー協会(FAM)のハミディン・アミン名誉会長に、可能ならCASに行かないようにと伝えたようだ。」
「FAM が CAS に控訴することについて、その人物が何か恐れているのか、私はわからない。これについてはハミディン・アミン名誉会長自身に聞けばわかるが。CAS に持ち込んだ場合、FAMが資格停止になるか、あるいはもっと悪いことが起こるという脅しもあったようだ。」と、イスマイル殿下はFacebook でも生配信されたファンとの質疑応答の場で述べています。
イスマイル殿下は、この人物が自らの FIFA内の立場から公に言えないため、ハミディンにそのような提案をしたのだとも述べています。さらに殿下は、今回のマレーシア代表と7名の国籍偽装疑惑問題は、「多くの人が知らない事実が背景にある」と陰謀論と言わんばかりの発言も行なっています。
なおスポーツ仲裁裁判所(CAS)は、12月9日にマレーシアサッカー協会(FAM)からの控訴を受理したことを確認したことを発表し、現在、CAS の手続き規則に従って書面を交換している段階だと報じられています。
CASへの控訴についてイスマイル殿下は、「CASへの控訴が棄却されたとしても、構わない。マレーシアのサッカーがそこで終わってしまうわけではなく、目指している究極の目標に向けて、その後も努力し続ければいい。」と発言しています。
これに先立ち、FIFA の控訴委員会は、FIFAは7名のヘリテイジ帰化選手の書類偽造疑惑に関する審理で提出された証拠を精査した結果、FAM と7選手による控訴を却下しています。この7選手は、DFガブリエル・パルメロ(この処分決定後にスペイン3部ウニオニスタス・デ・サラマンカと契約解除)、DFファクンド・ガルセス(スペイン1部アラベス)、FWロドリゴ・ホルガド(同じくコロンビア1部アメリカ・デ・カリと契約解除)、FWイマノル・マチュカ(同じくアルゼンチン1部ベレス・サルスフィエルドへのローン移籍が解除され、所属のブラジル1部フォルタレーザ帰還)、FWジョアン・フィゲイレド、DFジョン・イラサバル、MFエクトル・ヘヴェル(いずれもジョホール・ダルル・タジム)です。
この7選手はFIFA規律規定(FDC)22条(書類偽造)に基づく重大な違反があったとされ、罰金2,000スイスフラン(およそ39万円)および12か月のサッカー関連活動停止処分が下されています。またFAMにも罰金35万スイスフラン(およそ6800万円)が科されました。これを不服としたFAMと7選手は、書類内容は軽微なミスであったこと、また7名の選手は自分たちの知らないところで偽装が行われたとして、FIFAの控訴委員会に控訴しましたが、再審理の結果、全ての制裁が維持されました。そこでFAMと7名のヘリテイジ帰化選手は、今回のCASへの控訴へと踏み切りました。















